ここで一つのの試みとして、国家戦略論の
いちばん基礎的な事実関係である日本の
歴史と地理からはじめたいと思う。
そして、最終的には現在の日本をとりまく
戦略的環境ができるかぎり客観的に
解明されることによって、日本にとって
何が必要かがおのずからわかってくることを
期待する。
これは私の持論である情報重視からいっても
正攻法である。
「問題が全部わかれば問題は半ば解決したも
同然だ」というのは真理である。
まず客観情勢を綿密に分析評価していけば、
その対策はおのずから出てくるものだ。
日本国家戦略という大きな問題を考えるに
際しては、日本の歴史と地理という最も
基本的なものを知り尽くしてから論じるのは、
むしろあたりまえの方法論といえる。
その意味で、本書では日本の国家問題には深く
立ち入る余裕はないでしょう。
戦後日本の平和主義、憲法、非核三原則、
安保条約等をめぐる過去三十年間の
国会等における議論の蓄積は大きなものが
あり、私自身もその議論をことごとく
論じるように訓練されてきた。
しかし、本論の目的は、日本の国内事情を
中心とする天動説的立場から日本の
防衛策を論じることではない。
日本の政治は最終的にはその時点における
国内事情が許す範囲内で防衛政策を決定する
のだが、その決定に際してまず参考とすべき
客観的諸条件の判断において、国内事情から
くるこだわりや希望的観測は一切排除して、
できるかぎり雲りのない眼でみることを
期するのが本論の目的。
いずれにしても戦略論というものは日本では
まだまだ未開拓の分野で、糸口を見つけるのさえも
難しいような状況だから、あえて蛮勇をふるって
政府の立場を離れて個人の意見を述べさせて
いただくわけだから、私が独りで考えた意見の
中に、どこか未熟なものがあるおそれのあることは
自分でも充分認識している。
そこからもっと本格的な戦略論が生まれて
くることを期待している。
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