近代前の日本をめぐる戦略的環境は、
世界史上稀に見る安定性を示している。
もちろん周辺のアジア情勢は幾多の
変転を重ねている。
中国の歴史は宋が滅びるまでがいわゆる
十八史、その後、元明清をへて近代に
至るまで王朝の交代をくり返し、
朝鮮半島も、唐朝以降は中国王朝交代の
影響をモロに受けて、古代の三国から
新羅、高麗、李朝と交代している。
その間、日本は、有史前にあったらしい
天孫民族の日本征服以降は外敵による
日本の征服はただの一度もなく、日本の
王朝は一度も交代していない。
この事実が戦前の史観では、万邦無比と
いうことで、日本の超国家主義の根拠の
一つとなったことはまだ記憶に新しいところだ。
近代前とは、日本にとっては二つの大きな
戦略的環境の変化の起る前を意味している。
一つは中国が極東における支配的な力を
失ったことで、もう一つはいわゆる西力東漸の結果、
それまでは戦略的に真空地帯であった太平洋と
シベリアが、欧米の軍事的な力で
埋められるようになったことだ。
そして、この近代前の環境における
例外的な日本の平和を支えたものは、
もちろん日本の地理的特性だが、それに加えて
中華帝国というものの独特な性格と
その間に介在する朝鮮半島住民の
特殊な民族性が果たした役割がある。
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