防衛論争の過程で私はいろいろな方から書簡をいただいたが、
それを見てもソ連の脅威に一番深い危惧を抱くのは、
敗戦時満州でソ連軍の占領を経験した人々だ。
しかし日本人の圧倒的多数はアメリカの占領しか
経験していないので、どうしても降伏とか占領に
対するイメージが甘くなる
「経験から学ぶのは愚か者のすることで、余は歴史から学ぶ」
と言ったのはビスマルクだが歴史どころか、同時代の
同国民の経験から学ぶことさえ難しいのが現実だ。
元寇のときも壱岐・対馬の人々は捉えられ、
女性が掌に穴をあけられて船ばたに吊るされたという
記録も残り「むごい」という言葉は「豪古い」からきたと
いうが、それも満州の経験と同じように、
全国民的経験とはならなかった。
もっとも朝鮮戦争で米韓軍が釜山の橋頭保に
追い詰められても、東京の人は何も感じなかったのに、
北九州や山口県では危機感が高かったそうで、
これは元寇の記憶だという人もいる。
戦争の記憶というものは何世紀も残るものだから
本当にそうかもしれない。
また、侵攻軍が台風で全滅するということは
確率からいってそう大きいものではないはずだが、
歴史上たった二度の本格的侵攻で二度とも
そうなったということになると、日本人が
ツキに自信をもつのも無理のないことだ。
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